AIチャットをエクスポートしたあと、Obsidianに「使える」ダッシュボードを作った
少し前に、ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Grok、Gensparkの会話を、1つのNotionワークスペースへ集める実験について書きました。
そのときに確かめたかったのは、次のことです。
異なるAIサービスの会話を、1つの個人ナレッジベースとして扱えるか。
答えは「できる」でした。
ただし、次の問いのほうがはるかに重要でした。
数百件、やがて数千件のAIチャットを安全に保存できたとして、その履歴を何に使うのか。
失わないように残すことには意味があります。
しかし、過去の対話をもう一度考えるために使えるほうが、ずっと価値があります。
そこで次の試作として、Obsidian上にAIチャットを活用するための仕組みを作り始めました。
AIチャットの保管庫から、AIナレッジハブへ
最初の問題は、履歴が分散していることでした。
調査はPerplexity。
長文を考えるときはClaude。
アイデア出しはChatGPT。
Geminiで試すこともあります。
ほかの対話はGrokやGensparkに残っています。
各サービスはそれぞれの履歴を保存するため、気付けば6つの「知識のサイロ」ができていました。
AIExportHubを使えば、こうした会話をMarkdown、Notion、Obsidian、PDFなど、持ち運べる形式へ書き出せます。これで問題の前半は解決しました。
ところが、大量の履歴をエクスポートしたあとに、別の問題が見えてきました。
Markdownファイルのフォルダーは、チャット画面の履歴より安全です。しかし、ファイルを集めただけでは知識システムになりません。
そこで新しい出力形式を増やすのではなく、Markdownの上に「知識を使うためのレイヤー」を作ることにしました。
それが、AI Knowledge Hub for Obsidianです。
プラグインの概要や意見交換は、Obsidianコミュニティのページで確認できます。ソースコードを確認したい方、Issueを報告したい方、開発に参加したい方は、AI Exporter HubのGitHubリポジトリをご覧ください。
現在の構成:6つのAIから1,400件以上の会話を集約
現在のObsidian Vaultには、6つのAIサービスから取り込んだ1,400件以上の会話があります。
- ChatGPT
- Claude
- Gemini
- Perplexity
- Grok
- Genspark
これでも、自分の全履歴の一部です。
大きく変わったのは、6つの別々の保管庫を行き来しなくなったことです。
すべての会話が、1つのダッシュボードに並びます。

トップ画面では、保管した知識をいくつかの角度から把握できます。
Conversations(会話)
取り込んだAIチャット履歴の件数です。
件数を増やすこと自体が目的ではありません。ただ、数が1,000件を超えると、通常のフォルダー一覧だけでは管理できないことがはっきりします。
Sources(ソース)
会話を、元になったAIサービス別にまとめます。
ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Grok、Gensparkは、それぞれ独立した知識システムではなく、情報の出どころになります。
この違いは重要です。
プラットフォームからわかるのは「どこで作った会話か」です。
「何について話したのか」は、別の軸で考える必要があります。
Projects(プロジェクト)
使い続けるほど、AIサービスよりもプロジェクトのほうが重要だと感じるようになりました。
1つのプロジェクトに、次のような会話が混在することは珍しくありません。
- ChatGPTでのアイデア出し
- Claudeでの戦略検討
- Perplexityでのリサーチ
- Geminiでの実装相談
知識管理の視点では、この4件は同じ場所にまとまっているべきです。
長期的には、フォルダーだけで分類するより、次の階層が自然だと考えています。
Platform = 情報源
Project = 目的
Category = 知識の種類
まとめて取り込むと「Inbox」が必要になる
インポートが簡単になると、すぐに別の問題が起こります。
未整理の会話が、一度に数百件届くようになるのです。
そこでプラグインには、**Inbox(受信トレイ)**を用意しました。
考え方は、メールの受信トレイや「あとで読む」サービスに近いものです。
新しい会話は自動で届いてよい。ただし、未整理のまま放置する必要はない。
取り込んだ会話は、あとから次のように処理できます。
- プロジェクトへ割り当てる
- 知識カテゴリを設定する
- 確認済みにする
- お気に入りへ追加する
- そのままアーカイブする
小さな機能ですが、ここに保管庫と日常的に使う知識システムの違いが表れます。
保管庫が答えるのは、
どこへ保存したか?
Inboxが答えるのは、
まだ確認していないものは何か?
です。
「最近追加した会話」と「最近確認した会話」は分ける
ダッシュボードでは、一見よく似た2つの一覧を意図的に分けています。
Recent Imports(最近のインポート)
最近システムへ入ってきた会話です。
答える問いは、
新しく届いたものは何か?
Recently Reviewed(最近の確認)
自分が実際に開き、内容を見直した会話です。
こちらが答えるのは、
最近、何を読み返し、整理したか?
インポートを自動化すると、この区別が効いてきます。
分けておかないと、ダッシュボードは「届いたけれど一度も使っていない情報」の一覧になりがちです。
フォルダーより、プロジェクトを軸にする
実データを入れてわかった大きな教訓の1つは、物理的なフォルダーだけでは足りないことです。
Markdownファイルの保存場所が、
AI Knowledge/
ChatGPT/
だったとしても、その会話の用途は次のどれかかもしれません。
AIExportHub
Marketing
Product Design
Customer Support
Finance
Research
そこで、フォルダーは主に元サービスごとの保存場所として使い、プロジェクトやカテゴリはメタデータとして持たせています。
会話ファイルの概念的な形は、次のようになります。
---
type: ai-conversation
platform: ChatGPT
project: AIExportHub
category: Product
favorite: false
status: reviewed
---
この構造なら、Markdownファイルを移動しなくても、同じ会話を目的の異なるビューに表示できます。
Obsidianがこの実験に向いている理由の1つです。
情報の正本はMarkdown
従来のWebダッシュボードと最も違うのは、ここかもしれません。
データベースはプラグインではありません。
Markdownファイルそのものが正本です。
構造を簡略化すると、次のようになります。
ChatGPT
Claude
Gemini
Perplexity
Grok
Genspark
↓
AIExportHub
↓
Markdown files
↓
Obsidian Vault
↓
AI Knowledge Hub
ダッシュボードは、ファイルを見るためのインターフェースです。
仮に明日プラグインが使えなくなっても、会話は通常のMarkdownとしてVaultに残ります。
そのまま、
- 開く
- 検索する
- 移動する
- バックアップする
- 同期する
- 編集する
- 別のツールでインデックス化する
- ほかのサービスへ移行する
といった操作ができます。
この設計から、1つの原則が見えてきました。
ダッシュボードには寿命がある。Markdownは長く残る。
個人の知識を長期保存するなら、別の独自データベースへすべてを預けるより安心できます。
本当に重要なのはダッシュボードより「会話ページ」
トップ画面は全体を把握するのに便利です。ただし、プロダクトの中心はホーム画面ではないと考えています。
より重要なのは、会話をクリックしたあとの画面です。

会話ページの中心にあるのは、あくまで元のチャットです。
AIが作った要約で、元の対話を置き換えるつもりはありません。
原文を中心に残し、その周囲で次の問いに答えられるようにしたいと考えています。
- どのプロジェクトの会話か
- どの種類の知識か
- お気に入りに残す価値があるか
- すでに確認済みか
- 関連する会話はあるか
- ここから得た重要なアイデアは何か
- この会話で何かを決めたか
- 一部を恒久的な知識ノートへ昇格すべきか
ここまでできれば、「検索しやすいチャット履歴」の先へ進めます。
会話と知識は同じではない
この区別は、実装を進めるほど重要になってきました。
50メッセージある会話でも、半年後に役立つのは1つのアイデアだけかもしれません。
別の会話には、次のような要素が含まれているかもしれません。
- 1つの意思決定
- 3つの参考資料
- 再利用できる説明
- 未完成のアイデア
そのため、最終的な知識システムが「会話全文」を永遠に最小単位として扱う必要はないと考えています。
将来的には、次の流れが自然です。
Conversation
↓
Extract
↓
Insight / Idea / Decision / Resource
↓
Project
↓
Personal Knowledge
会話は出典として残します。
そのうえで、重要な部分を通常のMarkdownナレッジノートにできます。
---
type: ai-knowledge
knowledge_type: insight
project: AIExportHub
source_conversations:
- "[[AI Knowledge Hub Product Strategy]]"
---
こちらのほうが、本来の「セカンドブレイン」に近い設計です。
検索よりも「再発見」が価値を持つかもしれない
ダッシュボードには、**Rediscover(再発見)**という領域もあります。
以前のNotion版ではコンセプトとして考えていた機能を、Obsidian版では実際の体験に取り入れました。
検索が解決するのは、次の問題です。
あの情報があることは覚えている。見つけてほしい。
再発見が解決するのは、別の問題です。
存在自体を忘れている。役立つタイミングでもう一度見せてほしい。
たとえば、将来的には次のような情報を提示できます。
このテーマは6か月前にも調べています。
または、
この3件のClaudeでの会話は、現在のプロジェクトと関連しています。
あるいは、
8か月前にお気に入りへ追加しましたが、その後一度も開いていません。
さらに、
ChatGPT、Claude、Perplexityを横断すると、似た質問を14回しています。
これは通常の検索より、記憶の働きに近い体験です。
なぜObsidianなのか
ObsidianがNotionより常に優れているとは考えていません。
得意分野が違います。
Notionが優れているのは、たとえば次の領域です。
- データベース
- 構造化されたビュー
- クラウドからのアクセス
- 共同作業
- 外部共有
一方、AIチャットを長期保存する用途でObsidianが興味深いのは、次の特徴があるからです。
- ローカルファイル
- Markdown
- バックリンク
- メタデータ
- 全文検索
- データの可搬性
- 長期的な所有権
AIとの対話は、数年分の調査、意思決定、実験、思考の記録になっていく可能性があります。
その履歴全体を1つのAIサービスに依存させたくありません。自作のプラグインにも依存させたくありません。
ツールがなくなっても、ファイルは残る。
その状態が重要です。
AIExportHubは「取り込みレイヤー」へ
Obsidian版を作ったことで、AIExportHubの位置付けも変わりました。
もともとの目的は、AIとの会話をエクスポートすることでした。
もちろん、それは今も重要です。
ただ、エクスポートは最初のレイヤーにすぎないと感じるようになりました。
現在は、全体を次の4層で考えています。
Layer 1 — Capture(取り込む)
AIExportHubが、ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Grok、GensparkなどのAIサービスから会話を取り出します。
Layer 2 — Organize(整理する)
Obsidianプラグインで、次の軸から整理します。
- 情報源
- プロジェクト
- カテゴリ
- ステータス
- お気に入り
- 更新時期
Layer 3 — Retrieve(探し出す)
検索とフィルターを使い、必要になった会話を再び見つけます。
Layer 4 — Rediscover(再発見する)
忘れていた知識やつながりを、システム側から提示します。
要約すると、
AIExportHubは、AIとの会話を取り込む。
AI Knowledge Hubは、その会話をもう一度使えるようにする。
次に作りたいもの
現在のバージョンは、まだ初期段階です。
基礎部分は動くようになりました。
- 複数AIサービスの会話ライブラリ
- ダッシュボード
- Inbox
- Recent Imports
- Projects
- Categories
- Favorites
- Recently Reviewed
- Rediscover
- 会話ごとの詳細ビュー
次のレイヤーでは、より面白いことができそうです。
関連する会話
プロジェクト、カテゴリ、タグ、将来的には意味の近さをもとに、関連する対話を表示します。
知識の抽出
会話の一部を、次のような独立した知識へ変えます。
- 洞察
- アイデア
- 意思決定
- タスク
- 参考資料
会話の比較
異なるAIサービスの会話を選び、次の観点で比較します。
- 共通する結論
- 異なる視点
- 矛盾する意見
- その会話にしかない発見
セマンティック検索
数か月前に使った言い回しを覚えていなくても、意味から検索できるようにします。
自分のAI履歴に質問する
最終的には、次のように質問したいと考えています。
このテーマについて、自分はこれまで何を学んだだろう?
答えの根拠は、1つのAIモデルが現在持つコンテキストだけではありません。複数のAIツールにまたがる、何年分もの自分の会話です。
そして、回答から必ず元の会話へ戻れるようにしたいと思っています。
出典を失わないことは重要です。
問いは「AIチャットをどう保存するか」ではなくなった
エクスポートツールを作り始めたころ、問題は単純に見えました。
ChatGPTの会話をどう保存するか?
次に、こう変わりました。
すべてのAIサービスから会話を保存するには?
そして今は、もっと大きな問いになっています。
AIとの何年分もの対話を、もう一度使える知識へどう変えるか?
答えは、「すべてエクスポートする」だけではないはずです。
エクスポートは必要です。
そのあとに整理があります。
整理のあとに検索があります。
そして検索の先に、より価値のあるものがあります。
再発見です。
AI Knowledge Hubで探っていきたいのは、この方向です。
自分のAIナレッジアーカイブを作る
ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Grok、Gensparkなどに会話が散らばっているなら、AIExportHubを使って、Notion、Markdown / Obsidian、PDFなど持ち運べる形式へまとめられます。
前回の実験も、あわせて読めます。
AIとの対話784件をNotionに集約してわかったこと——AIナレッジハブの作り方
Notion版からは、情報をどう構造化するかを学びました。
Obsidian版では、別の問いを探っています。
ローカルファーストなAIセカンドブレインは、どのような姿になるのか?
答えはまだ探している途中です。
それでも、今回のバージョンは理想にかなり近づいています。
自分のAIチャット履歴を管理するために、このようなObsidian環境を使ってみたいと思いますか?
もしローカルに数千件の会話があるなら、最も必要なのは何でしょう。
検索、プロジェクト管理、知識抽出、比較、それとも再発見でしょうか。